足関節捻挫は、様々なスポーツ外傷のなかでも最も発生頻度が高く、再発しやすい外傷です。
その中でも多くみられるものに足関節内反捻挫があります。
この内返捻挫が起こりやすい原因として、
1,足関節の構造
2,荷重関節であり地面に近いことからその影響を受けやすい
3,足が地面に固定されたときに足関節より上位の動きの影響をうけやすい(ふり返り時など)、両足立ちから片足立ちになる際に荷重が外側へと偏位するために足部回外が起こりやすい肢位になる
4,足部が地面に固定されたまま重心が外方へ移動する際に内返しが強制される
などがあります。
捻挫とは生理的な可動範囲を超える外力が加わることで関節の構成体(関節包、靭帯、皮下組織)が損傷したものをいい、外力が消失した後に関節の解剖学的な位置関係が元の状態に戻ったものをいいます。骨折や腱断裂は含みません。
ちなみに脱臼は位置関係が逸脱したままのものをいいます。
捻挫への施術をする際は、圧痛点による損傷部位を確認する必要があります。またエコーがあれば撮ると良いでしょう。
内反捻挫で損傷する部位は、その受傷機転の違いから、前距腓靭帯、踵腓靭帯、二分靭帯の損傷があります。
似たような外力の加わり方で骨折をしていることもあるので注意が必要です。
よくある受傷機転として、方向転換時やジャンプからの着地時に、足関節が内返しあるいは底屈を強制されて生じる外側靭帯損傷があります。バレーボールやバスケットボールなどで多く見られます。
痛みはあるもののプレイ続行が可能な軽傷例から、痛みが強く歩行も困難な重症例まで様々です。
足関節の内返しが強制され、外側靭帯の部位に圧痛があり、内反ストレスをかけたとき外側を痛がれば外側靭帯損傷の可能性が高いです。靭帯損傷の重症度は、
Ⅰ度は靭帯が一度伸張された状態、
Ⅱ度は部分断裂、
Ⅲ度は完全断裂、
に分類されます。臨床的には、外側靭帯に圧痛があるものの、前方不安定性がなく、腫れも軽度な場合はⅠ度、痛みが強く歩行も困難で、明らかに前方引き出しテストが陽性であればⅢ度損傷と評価しますが、アスリートでは、外側靭帯損傷を繰り返していて、通常時でも前方引き出しテストが陽性の場合も多く見受けられます。
また靭帯の単独損傷か、骨折を合併しているかの判断は難しく、受傷後スポーツの継続が困難な場合はは、X線撮影を行い、足関節周囲の骨折の有無も確認するとよいでしょう。
初期治療はRICE処置を行うのが基本とされています。最近ではPOLICEやPRICEなどの方法も広まりつつあります。患部の安静、冷却、圧迫、挙上をします。冷却は24~48時間行うことが望ましいとされています。
靭帯が損傷を受けると受傷前と同じ強度を持つことはありません。そのため靭帯が損傷すると、不安定性のため容易に足関節捻挫を繰り返すことになります。これがいわゆる捻挫が癖になった状態です。このような状態でスポーツ活動を続けると、その不安定性から本来持っているパフォーマンスを十分に発揮できません。車でいうとふにゃふにゃのサスペンションの様な感じになってしまうのです。
捻挫を甘く見てはいけません。
運動療法や物理療法によって靭帯が元の強さになることはありません。足関節の動的安定性を出すための運動療法が必要になります。足関節の外返しに作用する長腓骨筋の筋力強化が重要です。
足関節捻挫を繰り返す症例では、立方骨-第5中足骨間の不安定性を有していることも多くそのような症例では、短腓骨筋や小趾外転筋の筋力強化も併せて行うとよいでしょう。
足首の後ろ(アキレス腱の辺り)が痛い場合、それは三角骨障害かもしれません。
大谷翔平選手も一時期苦しめられました。
三角骨とは、距骨後突起部分の本来なら無くてもいい骨のことをいいます。
その出現率は10%前後といわれ、約1/3が片側だけにあるといわれています。
三角骨ができる原因として、
通常は小学生の頃に癒合するものが癒合不全の状態に陥り過剰骨となったもの。
距骨後突起の外側結節が骨折を起こして、偽関節になったものが考えられています。
サッカーやクラシックバレエなど足関節を底屈(足首を伸ばす)するスポーツで多くみられ、足首に負担がかかり徐々に症状が出現するものもあります。
クラシックバレエでは過度に底屈した肢位(ポアント肢位)をとることが多く長拇趾屈筋腱(足の親指を曲げる筋肉)に負担がっかています。この際の挟み込み(インピンジメント)が疼痛の原因と考えられています。アキレス腱周囲炎との鑑別が重要です。
インピンジメントとは関節が動くことによって滑膜などの軟部組織や出っ張った骨などが挟まりこんで痛みを起こすことを言います。
三角骨や距骨後突起などの影響で、底屈時に足首の後ろに疼痛を生じる疾患を総称して足関節後方インピンジメント症候群といいます。
内視鏡を使った治療が行われるようになったことで、骨以外の靭帯や滑膜によるインピンジメント症候群も知られるようになってきました。
ランニングではなることは少ないですが、捻挫などをきっかけとして足首の後ろの痛みが出ることもあります。
検査では底屈強制によって足関節の後ろに痛みを誘発することができます。また三角骨の近くを長拇趾屈筋が走行するため、長拇趾屈筋炎を併発することもあります。
治療はまず保存療法が選択されます。安静にする、スポーツ活動の中止や制限、物理療法を行うなどして炎症を鎮めるようにします。
また痛みの原因となる動きの癖などの修正をします。
接骨院でできるのはここまでで、整形外科でレントゲンを撮ってもらうと距骨後突起部分に過剰骨(三角骨)が見られることもあります。CTではよりはっきりと三角骨の確認が可能です。
局所麻酔薬とステロイド薬の注射をしたり、難治例では三角骨切除術が行われます。最近では鏡視下による切除術が行われます。
アキレス腱炎は、アキレス腱部の疼痛性疾患で、多くはランニングやジャンプを繰り返すスポーツ選手にみられます。
腱自体の炎症であるアキレス腱炎と腱傍組織(paratenon)などの炎症であるアキレス腱周囲炎がありますが、明確に区別するのは難しいです。
一般に足関節の背屈による伸長と、筋肉の収縮力などで発症します。
発症機転によりいくつかのバリエーションがみられます。
ランニングやジャンプでの遠心性収縮時の伸長ストレスや回旋ストレスが主な原因となりますが、靴や路面などの環境要因も関与します。
下腿三頭筋からアキレス腱の柔軟性をみることが重要で、回内足はアキレス腱への回旋ストレスが強くなるので足部のアライメントのチェックも必要です。
アキレス腱の内側に発生する人は、支持脚がトーアウトしているとアキレス腱内側部の伸長ストレスに加えて回旋ストレスがかかります。これは路面の傾斜や靴の踵部の内側の減りによる傾きで、踵骨が回内を強制されたときにも同じような状態になります
アキレス腱外側部の痛みはほぼ上記の反対ですが、方向転換では前述同様の状態でも踵骨が回外していたときその力はアキレス腱外側部への伸長ストレスを増大することに注意しなければなりません。
治療法としてはまず運動を休止します。
疼痛が激しい場合は松葉杖の使用などで患部の負担を軽減し、炎症に対してアイシングを行います。
下腿三頭筋のストレッチングは、膝関節を伸展位と屈曲位で行うことで、腓腹筋とヒラメ筋のストレッチングを効果的に行います。
疼痛が改善すれば、弾性バンドなどの抵抗運動から下腿三頭筋の筋力強化を開始し、カーフレイズまで行えるようにします。
走行開始時には、インソールにヒールパッドを入れて踵部を補高し、アキレス腱の緊張を緩和する方法もありますが、筋を短縮させていることになるので慎重に行う必要があります。
下駄骨折は、段差を踏み外したりして足首を捻った際に、足の甲の骨の第五中足骨が筋肉(短腓骨筋)の牽引力と捻転力により骨折するものをいいます。
名前の由来は、昔下駄を履いてる時によく起こった骨折だからだそうです。
今だとハイヒールを履いて歩くのも注意が必要です。
スポーツ活動中だとジャンプの着地の際に起こることが多いです。
正式には第5中足骨基部骨折といいます。
受傷直後から足の強い痛みと腫れがでますが、捻挫と間違えて骨折が見逃されることもあります。
特に小指側が痛くなり、基本的には足を付いて歩けなくなることが多いです。
通常4~6週間ギプスシーネ固定しますが、ズレが大きいときは手術になることもあります。
スポーツへの完全復帰には3か月位かかることが多いです。
固定期間中に筋力が落ちるので、リハビリ期間中にしっかり足首廻りの筋力訓練をする必要があります。
また筋力だけ強くなっても動作が変わってなければ再受傷のおそれもあるので、動作の改善も必須です。
骨が成長しきってない子どもの場合、
足首を捻った際に骨端線を損傷することがあります。
骨端線とは成長軟骨板のことで、成長軟骨板は骨が伸びるときの伸びる場所そのものです。
子どもの場合、靭帯よりも骨端線の方が構造的に弱いので、足首を捻ると靭帯ではなく、骨端線を損傷することが多いです。
話はそれますが、野球をやっている子の肘の内側の損傷も靭帯損傷よりも、骨端の離開や、裂離骨折が多いです。
16歳以上になると肘に靭帯損傷となることが多くなります。
骨端線損傷は外くるぶしとそのやや上が腫れ、押すと強い痛みが出て歩行も困難となることが多いです。
明らかに骨折しているようなものから、損傷の程度が軽いものだとレントゲン検査でも分かりにくく、捻挫と診断されるようなものまで様々なものがあります。
骨端線損傷も骨折の一種なので、
放置すると成長障害を起こすこともあるので治療は慎重にします。
通常は2~3週間のギプス固定をし、その後可動域訓練、筋力トレーニングなどをします。